臓器移植

肝移植

肝臓は生命維持に不可欠な臓器であり、各疾患に対する治療法は日々進歩してきました。しかし肝臓の機能そのものが病気によって、あるいは治療を繰り返すことによって弱っていくと、切除や薬剤での治療は難しくなっていきます。このような他に治療法がない病気の肝臓を、別の人から取り出した健康な肝臓と取り替えるという治療法が肝移植です。それまで末期肝疾患で歩くことも出来なかった患者さんが、新しい肝臓によって日常生活を問題なく送り、社会復帰することが出来るようになる非常に強力な治療法です。

≪目次≫

0.当科の特色
1.肝臓の働き
2.肝不全
3.肝移植の適応疾患
4.移植の時期
5.生体部分肝移植・脳死肝移植
6.生体肝移植移植までの流れ
7.脳死肝移植について
8.脳死肝移植までの流れ
9.生体肝移植・脳死肝移植の長所と短所
10.脳死肝移植の現状
11.肝移植診療実績
12.ABO血液型不適合移植
13.移植費用
14.チーム医療
15.診療のご案内

0.当科の特色

■慶應義塾大学外科移植チーム


当科では1995年の生体肝移植開始から2015年12月までに243例の肝移植(生体235例、脳死8例を行ってきた歴史があり、全国集計と比較しても良好な成績を達成しております。その初期から20年に渡り小児外科と連携して移植チームとして肝移植を行い、研鑽を積んできました。当院は、生体肝移植の他に脳死肝移植・小児肝移植・小児小腸移植も行っている全国で数少ない施設でもあります。
一般・消化器外科、小児外科の他に内科、小児科、看護部、移植コーディネーターなど多くの診療科および関連部門と連携し、移植に関わる様々な問題に対処しています。


■血液型不適合移植


肝移植では血液輸血と同じように、肝臓をあげる方(ドナーと言います)ともらう方(レシピエントと言います)の血液型の相性が重要になります。血液型の相性が悪い場合は激しい拒絶反応を起こすため、かつては禁忌とされていました。また、現在でも通常は肝移植の適応としない施設も数多くあります。
当院では、ABO血液型が不適合である肝移植にも積極的に取り組んでおります。特に、私たちが独自に開発し1998年に実際の治療に導入した門脈注入療法は、それまで予後が極めて悪く禁忌とされていた成人ABO血液型不適合成人肝移植の成績を飛躍的に向上させました。その長期成績は現在、血液型適合症例と遜色ないところまで改善しています。今も多くの患者さんが血液型不適合生体肝移植の可能性を求め、私たちのもとを訪れております。


■急性期クラスター


肝臓の病気は薬剤を使って管理する内科の疾患でもあり、時に手術が必要な外科の疾患でもあります。例えば劇症肝炎・急性肝不全と言われる緊急疾患は、昨日まで全く健康であった人が急激に肝不全となり数日のうちに亡くなってしまうこともある恐ろしい病気です。内科的な薬での治療が効かなければ肝移植が必要になりますが、その判断・タイミングは専門家でも難しいものです。当院ではこのような患者さんには外科だけでなく消化器内科・麻酔科ともチームを組み、合同で全身管理を行いながら常に情報交換する体勢を用意しています。チームで議論することで偏りない判断を行い、肝移植が必要となれば迅速に手術を行える準備をしています。


1.肝臓の働き

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肝臓は体の中の化学工場や貯蔵庫などに例えられます。それは肝臓が、腸で吸収された栄養素の代謝・貯蔵、消化液の生成、解毒や排泄などの生命の維持に必要な多くの機能を司る不可欠な臓器であるためです。







2.肝不全

正常な肝臓には、生命を維持するよりも余力が備わっているために、ある程度の障害を受けても生活に大きな支障はありません。しかしながら、限度を超えて肝臓が障害されると、生命維持が困難となります。このように、身体の要求に応える仕事が出来なくなる状態を「肝不全」と言います。

残念ながら、現代の科学技術を以てしても人の命を支えられる「人工肝臓」を作ることはできないのが現状です。そのため、肝臓が重篤な肝不全となる病気になり他の治療の効果がない重症の肝不全に対して、有効な治療法は肝移植のみとなることがあります。


3.肝移植の適応疾患

主に以下に記載した疾患について病気の原因が肝臓にあり、他の臓器に重篤な障害がない方、他の治療法では救命が困難である方などが対象となります。


  • ・胆道閉鎖症
  • ・原発性胆汁性肝硬変
  • ・先天性代謝異常症
  • ・肝静脈血栓症 (Budd-Chiari症候群)
  • ・硬化性胆管炎
  • ・肝細胞癌 ※1
  • ・B型肝炎・C型肝炎に起因する肝硬変 ※2
  • ・アルコール性肝硬変 ※3
  • ・非アルコール性脂肪肝炎
  • ・劇症肝炎
  • ・その他

※1 肝細胞がんの場合は、ミラノ基準(①腫瘍が1個だけで大きさが5 cm以下または腫瘍が3個までで大きさが3 cm以下、②脈管に浸潤していない、③肝臓以外に転移がない)を満たしていることが移植における保険適応の条件になります。 初診時にミラノ基準を超えている場合も、他の治療法を組み合わせることで基準内になれば、移植の適応となることもあり得ます。
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※2 近年の抗ウイルス剤の開発によって、B型・C型肝硬変は肝移植のよい適応と考えられるようになってきました。とくにC型肝炎については2013年に発売されたソブリアート、ごく最近登場している直接作用型 抗ウイルス剤(DAA)を用いたインタフェロン不使用治療で、移植後にC型肝炎ウイルスを消失させることが高率に可能になっています。ソブリアートによるウイルス消失率は80%、 DAAを用いた治療もそれ以上の成績が期待されています。
※3 アルコール性肝硬変や若年者の劇症肝炎では非常に良好な経過を辿ることが多く、移植の良い適応であると考えられます。

4.移植の時期

移植実施のタイミングは、日常生活に支障をきたす程、肝障害が進んだ状態となった時です。肝硬変などで徐々に肝障害が進む場合や、劇症肝炎などで数日のうちに重篤な肝不全となる場合があります。肝臓の障害度を評価するために様々な指標が使われますが、Child-Pugh分類※4でBまたはCに相当することや、MELDスコア※5で15~25であることが肝移植適応の目安になります。この状態になると、病気はかなり進行していると推測されるため、その前から肝移植の準備を進めておくことが望ましいでしょう。


※4 Child-Pugh分類
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※5 MELDスコア
肝硬変の重症度評価や予後予測に用いられる指標。
UNOS(全米臓器分配ネットワーク)でも重症度判定や優先順位決定に用いられています。
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5.生体部分肝移植・脳死肝移植

肝臓移植には、生体部分肝移植と脳死肝移植があります。日本では脳死移植の件数が少なく、多くは生体肝移植が行われています。肝臓をもらう側をレシピエント、与える側をドナーと呼びます。


■生体部分肝移植


生体部分肝移植とは、健康な人(ドナー)から肝臓の一部分を取り出し、患者さん(レシピエント)へ移植する手術のことです。


■脳死肝移植


脳死肝移植とは、脳死で亡くなられた方の善意によって提供された肝臓の一部または全てを、患者さん(レシピエント)へ移植する手術のことです。


≪レシピエントの条件≫

  • 1) 病気の原因が肝臓の病気であり、他の臓器に重篤な障害がないこと。
  • 2) 肝不全の症状が進んでおり、他の治療法では救命が困難であること。
  • 3) 肝細胞癌以外に悪性腫瘍がないこと。
  • 4) 肝細胞癌の場合は、ミラノ基準以内であること。
  • 5) アルコールや薬物などの依存症がないこと。
  • 6) 飲酒していた方は禁酒できること。
  • 7) 本人や家族に十分な理解があること。


1.ドナーの条件


ドナーの選択は自発的意志に基づく臓器提供を大原則としています。その上で血液型の適合性、肝障害の有無、移植肝の大きさなどを総合的に評価し、ご家族の希望や社会的背景などの考慮を重ねた上で、最適なドナー選択を行っております。


1)倫理的条件

a)明確な臓器提供の意思
ご自身の意思で臓器提供されるということが最も重要であり、いかなる強要や利害関係もないこと。
b)血縁関係

全く無関係の方からの臓器提供はできません。日本移植学会で定められた、レシピエントから6親等以内の親族、3親等以内の姻族であることが条件となります。


2)年齢

20歳以上60歳以下を原則とします。また、各種条件が非常に良い場合に限り65歳までとすることがあります。


3)医学的条件

a)原則健康であること
移植の時点で悪性腫瘍や感染症などの病気がないことが前提となります。
b)肝臓の大きさが十分であること
生体部分肝移植ではドナーの肝臓を①レシピエントにあげる肝臓②自分(ドナー)に残す肝臓の2つに分ける手術を行います。
どちらの肝臓の場合でも、大きさが足りないと術後の身体要求に肝臓機能が追いつかず、生命も脅かす状態となる可能性もあるため、術前の画像検査から3Dイメージを構築し、綿密なシミュレーションと肝重量予測を行います。シミュレーションの結果、どちらかの肝臓の大きさが足りないと判断された場合には、生体肝移植のドナーになることはできません。

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c)血液型について
ドナーとレシピエントの血液型が移植成績に影響することが分かっています。
ドナーとレシピエントの血液型の関係は、「一致または適合」の場合と「不適合」の場合に分けられますが、血液型不適合肝移植では、移植された肝臓にレシピエントの抗体が激しい拒絶反応を起こし種々の合併症を誘発すると言われています。
そのため血液型不適合の移植成績は著しく不良とされ、過去には禁忌とされていました。現在も血液型適法性は一致・適合が望ましいと考えておりますが、当院の特徴として、従来極めて成績が不良と考えられてきた成人血液型不適合移植に積極的に取り組んでおり、さまざまな工夫を取り入れることにより、通常の血液型一致・適合移植と同等に近い良好な成績を収めております。

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2.生体部分肝移植の手術


1)ドナー手術(肝臓を提供する方)

ドナーから肝臓の一部を切除します。
レシピエントに必要な移植肝の大きさに準じて、外側区域、左葉、右葉などをグラフト(移植する肝臓)として摘出します。

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いずれの術式でも胆嚢摘出を同時に施行します。通常輸血が必要となることはありません。手術時間は約5~8時間で、手術当日は集中治療室に入室し、翌日一般病棟へ戻ります。また、2009年以降左葉系グラフトなど一部の手術ではビデオアシスト、多方向創牽引鈎など各種の工夫をすることで小開腹ドナー手術を施行しています。腹腔鏡補助下手術は、保険適応でないため実施できませんが、腹腔鏡補助手術に近い創長で手術を実施できています。小開腹手術のドナー術後平均在院日数やレシピエントの成績は、以前標準創長手術をしていたころと比較し遜色ありません。


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2)レシピエントの手術(肝臓をもらう方)

レシピエントの悪くなった肝臓全てを取り除きます。
ドナーから摘出した肝臓を、レシピエントに植え込む手術を完了します。
移植肝の血管がレシピエントの血管に、また移植肝の胆管はレシピエントの胆管または小腸につながれ、移植は完了します。


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手術時間は術式にもよりますが、脳死レシピエントでは6~8時間、生体レシピエントでは10時間以上要します。術後に集中治療室で管理されますが、集中治療室在室期間は脳死レシピエントでは1~3日、生体レシピエントでは3~5日間です。病状により大きく変わりますが、30~60日程度で退院することになります。免疫抑制剤は手術後すぐに開始され、生涯内服し続けることになります。


3.レシピエントの手術合併症


3)生体部分肝移植の予測される合併症とそれに対する処置

生体部分肝移植は高度な技術を要する大きな手術であり、手術に伴う合併症が起こる可能性も常に念頭に入れた管理が必要になります。
また、術前の全身状態が悪い患者ほど合併症の発生率が高い傾向があるため、全身状態が比較的安定している時期に計画的に手術を行うことが重要です。
手術に関する主な合併症は、a) 出血、b) 移植肝血流障害、c) 胆管合併症、d) 移植肝のサイズ不適合、e) 拒絶反応と術後免疫抑制療法に伴う副作用、f) その他の合併症に分類されます。

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a)出血
肝能障害の患者さんは止血力が低い上に、肝臓は血流が多い臓器なので、移植肝の切離面や血管の吻合部から出血する可能性があります。まれに術中多量出血で全身状態が不安定になり、大量輸血が必要になることがあります。
b)移植肝血流障害
移植肝は血流を受けて初めて機能することができます。従って、吻合した血管が何らかの原因で狭窄したり閉塞したりすることによって、移植した肝臓に甚大な影響が出る可能性があります。
c)胆管合併症
移植肝の胆管への血流が悪くなると胆管組織が弱り、胆汁の腹腔内への漏れ、術後胆汁の流れの悪化により、胆管炎や黄疸をきたすことがあります。
d)移植肝のサイズ不足
成人での肝移植の場合、提供された肝臓がレシピエントの身体に対して小さ過ぎる場合があります。重篤な場合は移植肝の機能不全ともなるため、術前の検査で移植肝の大きさを慎重に検討します。
e)拒絶反応と術後免疫抑制療法に伴う副作用
新しい肝臓が体内に移植されると、患者さんの体はそれを異物として排除しようとします。これを拒絶反応と呼び、放置すると移植肝は機能しなくなる可能性があります。従って、移植肝を生着させるためには、免疫抑制剤による拒絶反応のコントロールが不可欠です。拒絶反応は術後経過とともに発生率が下がってくる傾向にあるため、免疫抑制剤の投与量も術後経過とともに減量するのが一般的で、原則として退院後も生涯に渡り使用が必要です。
免疫抑制剤はレシピエントの細菌やウイルスに対する抵抗力も同時に低下させるため、感染症には十分な注意が必要です。これを予防または治療するために、抗生剤をはじめとしたさまざまな薬剤が投与されます。また、免疫抑制剤自体にも副作用は存在するため、患者さんの状態を診ながら量や種類を調節していきます。

4.ドナーの手術合併症


ドナー手術では、安全を第一に考え、合併症を極力少なくするよう努力していますが、約2割の症例でなんらかの合併症を経験しています。胆汁の流れ道である胆管にまつわる合併症(胆汁漏、胆管狭窄など)が最も術後入院期間を長くする合併症として挙げられますが、後遺症を残すような症例は経験しておりません。


6.生体肝移植移植までの流れ

1.移植を受ける可能性のある状況-初回診察


患者さんが診療を受けている医療機関で、移植以外に救命する手段が見つからないと判断された場合、主治医から当院にご紹介いただきます。患者さんご本人から直接連絡をいただくことも可能ですが、移植後のフォローアップのことを考慮すると地元病院との連携が大切ですので、まずは主治医にご相談ください。

初回診察は、移植医療についてお話しするだけでなく、十分に患者さんからのお話もお伺いするため、日程を調整しご来院いただきます。


2.移植医からの説明


移植医療が他の治療と異なる点は、移植を受けるには臓器提供者(ドナー)から臓器を頂かなければならないということです。それは、移植とは、人と人との関係で成り立つという必然的に感情的な治療であることを意味します。そのような点を踏まえた上で、①医学的に移植医療を受ける必要性やタイミングについて判断するとともに、②意思決定のプロセスを踏むことが重要です。この段階では、移植医や看護師、移植コーディネーターとさまざまな話をします。


3.レシピエント


レシピエントは、肝移植の適応を判断するための検査を受けます。レシピエントが外来通院できるようであれば、通院していただきながら検査を進めていきます。通院が不可能であれば、当院へ入院していただき検査を致します。また、レシピエントが他病院に入院中であれば、その病院から検査データをいただきます。


4.ドナー


3)のレシピエント検査を進めるのと同時、あるいは事前にドナーとなることができるか判断するための検査をします。ドナーの術前検査は、概ね3~4回の外来通院で検査できますが、ドナーの方の健康状態によっては、外来または入院で追加検査する場合があります。「ドナーの条件」についても、合わせてご覧ください。


5.適応委員会


慶應大学義塾大学病院では、移植が正当に行われているか、レシピエントもドナーも自由意志で意思決定をしているかなどを監査する委員会を設けています。適応委員会は、外科(移植医)以外の医師で構成されます。救命のための移植医療とはいえ、健康な人の身体にメスを入れる生体肝移植では、このような監査委員会の承諾を得ることが必要になります。


6.移植手術まで


適応委員会にて移植手術の承諾後、最終意思確認をし、移植手術が行われます。


7.脳死肝移植について

脳死肝移植とは、「脳死で亡くなられた方の善意によって提供された肝臓の一部または全肝を移植する手術」です。


1.レシピエントの条件


医学的には、生体肝移植と同様に他の治療による効果が望めない肝不全患者さんが対象となりますが、脳死肝移植の場合は日本臓器移植ネットワークに登録する必要があります。登録完了後、「肝移植待機リスト」に追加となります。


2.脳死ドナーの分配


日本国内で脳死ドナーが発生した場合、公益社団法人日本臓器移植ネットワークに連絡が入ります。移植ネットワークでは、事前に登録された待機患者さんのリストの中から、基準に従い患者さんを選択します。


3.配分の優先順位


1)医学的緊急度

予測余命など、患者さんの状態から10点までの点数が付けられます。点数が高い程、ドナーが発生した場合、優先的に提供を受けられます。

2)血液型

血液型は治療成績が良いと言われる「一致」と「適合」の待機者が候補となります。全く同じ条件では、「一致」の待機者が「適合」よりも優先されます。

3)待機日数

同じ条件では、登録してからの待機日数が長い程、優先的に提供が受けられます。


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8.脳死肝移植までの流れ

基本的に生体肝移植と同様、初回診察から移植についての説明や検査を行っていきます。


1.移植を受ける可能性のある状況-初回診察


生体肝移植と同様に、患者さんが診療を受けている医療機関で移植以外に救命する手段が見つからないと判断された場合、主治医から当院へご紹介いただきます。患者さんご本人から直接連絡をいただくことも可能ですが、移植後のフォローアップのことを考慮すると地元病院との連携が大切ですので、まずは主治医にご相談ください。  脳死肝移植においても、初回診察では移植医療についてお話させて頂くため、日程を調整し、ご来院いただきます。


2.移植医からの説明


医学的に移植医療を受ける必要性やタイミングについて判断することとともに、移植を受けた場合のメリット・デメリットなどについて、移植医や看護師、移植コーディネーターとさまざまな話をします。生体肝移植を同時に検討する場合には、この段階でドナー候補の方の検査なども考慮します。


3.肝移植適応についての評価


肝移植の適応を判断するための検査を行います。


4.適応委員会


検査結果を踏まえ、まず院内の移植適応委員会で脳死肝移植の適応があるかを判断します。


5.日本臓器移植ネットワーク登録


適応委員会で適応ありと評価された場合、全国組織である脳死肝移植適応評価委員会に申請し、承認後、日本臓器移植ネットワークの待機リストに登録されます。


6.最終意思確認


実際に順番が回ってきた場合には、まず移植医に連絡があります。ここで、病院が手術可能な状態であるか、待機患者さんの現在の状態は移植可能かなどの判断をした後、移植医からご本人に脳死肝移植を受ける意思の最終確認を行います。
移植を受ける意思が確認できれば、ご本人に緊急入院の準備をして頂くと同時に、脳死ドナーの方の元へ当院から外科医数名のチームを派遣します。


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9.生体肝移植・脳死肝移植の長所と短所

1.手術の時期


「生体肝移植」では、適正なドナーの方の同意が得られた場合、患者さんの病状が進行した際に予定手術を受けることができます。
「脳死肝移植」では、いつ提供を受けられるか待機期間が不明瞭なため、幸運にも提供を受けられた場合には緊急手術となります。


2.肝臓の大きさ


「脳死肝移植」では、ドナーの肝臓全てを移植できるため肝臓の大きさが問題になることはありません。また、大きい場合に適切に切離することがあります。

「生体肝移植」では、移植される肝臓は部分肝であるため、相対的に小さい肝臓が移植される可能性もあり、術前の慎重な検討が必要となります。


3.ドナーの選択と負担


「生体肝移植」では健康なドナーから肝臓をもらうため、ドナーには検査・手術などのご負担が伴います。また、親族の方に臓器提供の意思はあっても医学的理由などからドナーになることができる方がいらっしゃらない場合もあり得ます。


10.脳死肝移植の現状

生体肝移植のドナーとなる候補がいない患者さんには、積極的に脳死肝移植待機リストへの登録をお勧めしています。しかしながら、日本の脳死体からの臓器提供数は法改正後も全国で年40例程度と極めて少ない状況です。


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また、この限られた臓器は、医学的緊急度が高いとされる劇症肝炎の患者さん(最高点の10点)に優先的に分配されるため、肝硬変などの慢性肝疾患の患者さん(肝臓の機能によって8点、6点、または3点)にとって現実的選択肢とは言い難いかもしれません。こうした日本の脳死肝移植の現状を鑑み、慶應大学病院では生体・脳死移植両方の可能性をご説明し、生体・脳死両方またはいずれかの準備を進める様にしています。


11.肝移植診療実績

国内でこれまで行われた成人生体部分肝移植の累積5年生存率は約72%です。※6
当院で1995年4月~2015年11月までに行われた成人症例全体の5年生存率は約77%、小児症例全体の5年生存率は約90%となっています。成人の成績は近年は格段に向上しています。

※6 肝移植症例登録報告(日本肝移植研究会) 移植 50巻2・3号 Page156-169


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12.ABO血液型不適合移植

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私たちのグループで開発した移植肝臓への門脈内注入療法に加え、周術期のリツキシマブ(抗CD20モノクローナル抗体)投与などの工夫にて、成績は年々格段に改善しております。




13.移植費用

2004年1月1日より保険診療対象疾患が追加改正され、肝細胞がん、15歳以上の肝硬変・劇症肝炎を含めほとんどの疾患に保険が適用されるようになりました。


≪保険適応疾患≫

  • ・先天性胆道閉鎖症
  • ・進行性胆内胆汁うっ滞症
  • ・多嚢胞性肝、カロリ病
  • ・アラジール症候群
  • ・バッドギアリー症候群
  • ・先天性代謝性肝疾患(先天性アミロイドポリニューロパチーを含む)
  • ・肝硬変(非代償期)
  • ・劇症肝炎(ウイルス性、自己免疫性、薬剤性、原因不明を含む)
  • ・肝細胞癌(肝内に腫瘍径5cm以下1個、または腫瘍径3cm以下3個以内
     で、遠隔転移と血管侵襲を認めないものに限る)

生体肝移植を行うための総医療費は、700~1500万円ほどです。病状によっては、さらに高額になることもあります。前述の保険適応疾患により肝移植を受ける場合、高額療養費制度などの公的補助※を利用すれば、自己負担額は大きく軽減されます。一方、保険が適用されない疾患の場合、医療費全てをご負担いただくこととなります。

移植の費用は原因となる疾患や移植臓器の種類、術前後の経過により変わるため、詳細は来院時にお問い合わせください。


※ 公的補助
①特定疾患の医療費助成: 保険適応疾患が、厚生省指定、各自治体指定の特定疾患に該当する場合は、医療費が一部負担金のみの場合や、免除される場合があります。
②高額医療費制度: 保険適応疾患の肝移植手術に関しては、高額医療費制度を受けることができます。肝移植の際の医療費が高額になり、自己負担分の上限(約35,400円~139,800円)を越えた場合、超えた分の払い戻しを加入されている健康保険に申請すると受けられます。


14.チーム医療

慶應義塾大学病院外科移植グループは、2015年12月までに243例の生体・脳死肝移植を行ってまいりました。脳死肝・小腸移植を実施できる全国で数少ない施設の一つでもあります。外科学移植班は、成人担当の一般・消化器外科と小児外科の医師によって構成されており、加えて内科、小児科、看護部、移植コーディネーターなど多くの診療科および関連部門がチームを作り、移植に関わる様々な問題に対処しています。


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15.診療のご案内

初診の患者さんやご家族には、まず移植に関する様々な情報を丁寧にお話しするよう心がけております。受診される際は、当院移植コーディネーターへご相談ください。


初診の患者様、患者様をご紹介くださる医療機関の方は、移植コーディネーターまでご連絡下さい。
一般の外来の患者様と別に予約をとり、初診医とコーディネーターでご対応させていただきます。


電話: (03) 3353-1211(代表) または (03) 5363-2198(直通)
※代表電話の場合は、オペレーターへ「移植コーディネーター」とお申し付けください。
FAX: 03-5363-3642

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