膵臓の病気と治療
家族性膵腫瘍


目 次

1.家族性膵腫瘍とは?
2.どのような症状があるのでしょうか?
3.どのような検査を受けるでしょうか?
4.膵がんの治療は具体的にはどうするのでしょうか?
5.早期膵がん発見の取り組みとして


1.家族性膵腫瘍とは?

膵腫瘍には膵がんはもちろんですが、膵神経内分泌腫瘍(P-NET)や膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)、膵嚢胞性腫瘍(SCN, MCN)といった多種多様なタイプが存在します。膵がんはがんの中でも非常に顔つきが悪く、見つかった時にすでに手遅れの場合が多い大変治療の難しい病気ですが、その他の膵腫瘍に関しては良性の形をとるものもあれば、膵癌のように悪性の顔つきを示すものもあり診断や治療に難渋することが多いのが現実です。

これらの膵腫瘍は、ある一定の頻度で遺伝することが知られており、特に膵がんにおいては5~10%(10人から20人に1人)は家系内で遺伝しやすいと言われています。家族性膵がんの定義を載せますが、このように家族・家系内で膵がんになったことのある人がいる方は将来膵がんを発症するリスクが通常の人よりも高いことが知られています。

家族性膵がん家系の定義
・第一近親者(親子または兄弟)のうち、一対以上(2人以上)に膵がんを発症したことのある家系
・すでに遺伝性腫瘍として診断のついている人を除く

親子または兄弟のうち1人だけ膵がんを発症したことがあるだけでも、発症したことのない家系に比べて約4.5倍もの膵がん発症リスクがあることが、海外の研究でわかっており、家族歴は膵がんにおいて非常に重要な要素だと考えられています。また、家系内に膵がんでなくとも先に述べたような膵腫瘍(IPMNやP-NET)になったことのある人がいる場合にも膵がんになりやすい人がいるため、膵癌だけでなく膵腫瘍全般で家族歴を聴取する必要があります。

図1.家族性膵癌家系の一例|膵臓の病気と治療

2.どのような検査があるのでしょうか?

基本的には通常の膵がんや膵腫瘍と同様の流れですが、特に家族性が強く疑われる方に対しては、臨床遺伝学センターへの受診をお勧めし患者さん以外にも患者さんのご家族の方に詳細な遺伝カウンセリングや遺伝子解析研究への参加を募る場合がございます。

3.どのように通院すればいいのでしょうか?

家族性膵腫瘍が疑われる患者さんに対しては、可能な限り早期、つまり若年から介入し積極的に血液検査や画像検査による慎重なフォローアップを行います。具体的には、アメリカで推奨されているMRI検査や超音波内視鏡(EUS)検査といった画像検査で膵腫瘍が無いかどうか調べます。

4.慶應義塾大学病院での取り組み

我々は、外来で診察している膵がん患者さんまたは膵腫瘍患者さんを中心にご家族のお話をお聞きして、もし家系内に膵がんまたは膵腫瘍発症者がいる場合は、下図のように詳細な問診と家系図作成を行わせていただきます。
また、臨床遺伝学センターへ紹介しさらなる家系内調査と遺伝カウンセリングを行います。これにより家系内の健康な方に対してもしっかりとしたスクリーニング検査を行うことで膵がん、膵腫瘍の早期発見や早期治療につながると考えております。

また、大学病院としての特色を活かし、家族性膵腫瘍家系に対して遺伝子解析研究への参加を募る場合があります。近年遺伝子解析の発達により様々な腫瘍の原因遺伝子が見つかっておりますが、膵癌や膵腫瘍に関してはまだ多くが未知であり発展途上な領域でございます。治療の難しい膵がんを少しでも早く見つけて治療するためにも、家族歴を詳細に調査するスクリーニングが重要です。将来的には膵がん発症の原因遺伝子を見つけることで膵がんの早期発見・治療成績向上に貢献できればと考えております。